●黒塚(くろづか)あらすじ
紀伊国、熊野、那智山の東光坊(とうこうぼう)の高僧、阿闍梨祐慶大法印(あじゃりゆうけいだいほういん)がお供の剛力と修行の旅の途中、那須野ヶ原を通りかかり、九尾の悪狐が人々に害を与えていると聞き、この悪狐を退治しようとします。旅の途中、一行は宿を借りますが、そこの女主人=悪狐に化かされて法印は逃げ去り、剛力は食われてしまいます。それを知った弓の名人、三浦之、上総之により退治されます。
この演目は、能楽「黒塚」の鬼女と、「殺生石」の玉藻前の2 つの伝説を続けたもので、能楽の直接的影響が強く現れています。
●登場人物
法印(ほういん)
平安時代後期に実在した人物。阿闍梨とは密教で僧の模範となるべき特別な資格を有する高位の僧侶の称号。ここでは、剛力と共に旅をする僧。
一般には法印さんと呼ぶ。
剛力(ごうりき)
山伏が連れて旅をする従者。
女(おんな)
石見神楽では那須野ヶ原の鬼女が若い女の姿で、一夜の宿を借りたヶ祐慶一行を誘惑する。玉藻前(たまものまえ)、平安時代末期、鳥羽天皇に仕えた白面金毛九尾の狐が化けた伝説上の絶世の美女。
悪狐(あっこ)
白面金毛九尾の狐。鳥羽天皇が寵愛した玉藻前が九尾の狐の正体をあらわし、討伐軍によって殺害され、巨大な石に化身し、毒気をふりまき、人や家畜、鳥や獣に被害を及ぼした。やがて、示現寺を開いた玄翁和尚が、殺生石を破壊し、破壊された殺生石は各地へと飛散した。
三浦介(みうらのすけ)
白面金毛九尾の狐の討伐のために鳥羽天皇に任命された討伐軍の将軍。
上総介(かずさのすけ)
白面金毛九尾の狐の討伐のために鳥羽天皇に任命された討伐軍の将軍。
●ここに注目!
方言を使ったかけあいに注目!客席までもが舞台と化したダイナミックな演出に注目!
●鑑賞のポイント
(1)時には時事ネタも盛り込まれる方言でのかけあいは、そのほとんどが即興でおこなわれます。
(2)狐が剛力を追い掛け回す場面では、客席まで使って、所せましと舞手が躍動します。
黒塚の上演中、びっくりした小さなお子さんが泣き出してしまう場面も……。