●岩戸(いわと)あらすじ
日の神、天照大御神が弟の須佐之男命の乱暴に困り天の岩戸の中にお隠れになったので、世の中すべてが闇夜となり多くの禍が起こりました。そこで神々は集まって相談され、天の宇津女命を呼んで踊らせ、長鳴鳥を鳴かせ賑わいを出しました。これを不思議に思った大御神が岩戸を少し開けたところを、大力の手力男命が手を取って大御神を迎え出し、再び世の中が明るくなり、平和を取り戻しました。
その後、須佐之男命は髪を抜かれ手足の爪を剥がれて高天原から追放され、出雲の国に降り立ち「八岐大蛇」の物語へと続きます。
天の岩戸の物語を原材として、皇室の祖先とされる天照大御神の御神徳をたたえ、祭祀と神楽の起源を語るものです。
●登場人物
天照大御神(あまてらすおおみかみ)
須佐之男命の姉神、太陽を神格化した神で、皇室の祖神の一柱とされている。須佐之男命が高天原で乱暴を働き、天照大御神は天の岩戸に隠れてしまい世の中は闇になり、様々な禍が発生した。
児屋根命(こやねのみこと)
岩戸の前で祝詞を唱え、天照大御神が岩戸を少し開いたときに太玉命とともに鏡を差し出した神で、天孫降臨の際に瓊瓊杵尊に随伴し地上に下った。思兼神と同一神ともされる。
太玉命(ふとだまのみこと)
天照大御神を岩戸から出すための策を占うため、児屋根命とともに太占(ふとまに)を行い、 八尺瓊勾玉や八咫鏡などを下げた御幣を奉げ、岩戸から顔をのぞかせた天照大御神の前に差し出した。
宇津女命(うづめのみこと)
岩戸の前で様々な儀式を行った時に桶の上に乗り、背をそり胸乳をあらわにし、裳の紐を股に押したれて足を踏みとどろかして踊り、八百万の神々を大笑いさせた。その様を不審に思い戸を少し開けた天照御大神に「あなたより尊い神が生まれた」と言う。
手力男命(たぢからおのみこと)
岩戸の脇に隠れて立ち、岩戸を少し開けた天照御大神の手を取って岩戸の外へ引きずり出した。天孫降臨の際に瓊瓊杵尊に随伴し地上に下った。
●注目の神楽歌!
「先づは岩戸のその始め、隠れし神を出さんと、八百万の神遊び、これぞ神楽の初めなる。」
【神楽歌解説】
「天の岩戸に隠れてしまわれた天照御大神の出現を願い、八百万の神々が岩戸の前で神楽を舞いました。これが神楽の初めです。」と冒頭の掛け歌で歌います。
※この神楽歌は、演目の舞初めに囃子方によって歌われます。
●鑑賞のポイント
(1)演目の終盤にある天照大御神の前で八百万の神々による神遊びが神楽の起源と言われています。
(2)この舞は、ゆったりとした老人・若い女神の華麗な舞・怪力の神の力強い舞それぞれの所作の違いを見比べる事が出来ます。